Project.1
大規模商業施設に安心と
省エネルギーへの挑戦。
第2プラントの安定稼働をめざせ!

松田 誠(仮名)2002年入社

大阪エネルギーサービス設備管理室

※所属は取材当時のものです。

国内トップレベルの
冷暖房エネルギー効率をめざす

大阪エネルギーサービス設備管理室に勤務している松田は出張先で上司から一本の電話を受けた。それは予想したこともない内容だった。「第2プラントの稼動に責任者として参加して欲しい。おまえしかいない」。大阪・西梅田周辺の大型ビルの空調設備をつかさどる第1プラントで運用経験が買われての大抜擢だった。「既にプロジェクトはスタートしていたし、足りない知識もありました。責任とプレッシャーを感じましたが、『やってやる』という気持ちも芽生えてきました」と当時を振り返る。
第2プラントは地上28階、地下3階からなるノースゲートビルディングの建設に合わせてつくられたものだ。このプラントのオーナーが大阪エネルギーサービス株式会社であり、クライアントとなる。「単に最新機器や最新方式を導入するのではなく、シンプルでベーシックなプラントシステムの構築により運用のしやすさを実現することと、地域冷暖房プラントとしてトップレベルのエネルギー効率の達成と熱の安定供給を実現することが目標でした。まさに日本一のCOP(冷暖房エネルギー効率)をめざすプロジェクトです」。
松田がまず取り組んだのはプラント内の機器を徹底的に知ることだった。

ガスと電力を効果的に使うことで、ノースゲートビルへ冷暖房用を供給している第2プラント。防振・防音などの対策も万全に施されている

「定速高効率ターボ冷凍機、ガス焚き冷温水発生機、熱媒過流量制御対応型インバータターボ冷凍機、真空温水ボイラーなどが整然と並ぶプラントで、全機器の機能と特徴を調べ、あらゆる場合を想定し、クライアントと打ち合わせを重ね、機器の運用変更やバルブ取付けの提案など工夫も凝らしました」。定期的に開催される検討会では、事業主、設計者、施工者、オペレーターが集まり、プラント運用について徹底的に意見を交換した。誰ひとり欠けてもミッションは実現できない。緻密な情報共有と各者それぞれの立場での要望と進捗状況の確認が続いた。プロフェッショナル同士の信頼関係が熟成されていったのも、この時期だ。

同じベクトルで動く!
予期せぬ出来事にも
経験知とチームワークで対応

大阪ステーションシティ開業目前。第2プラントの試運転が始まった。関わった技術者たちが見守るなかで試運転開始。ところが、設計通りの稼動はできず、手動で対応しなければならない場面も発生した。「役立ったのは第1プラントでの経験です。しかし、それだけではありません。予想外の出来事にもあわてず、同じベクトルで動き、迅速に対応できたのはチームワークでした」。試運転までに培われたメンバーの信頼関係と「必ず成功させる」という強い意志は、予期せぬ出来事にも瞬時に対応する強い力に変わっていた。
開業1年目の夏がやってきた。松田たちが最も注意を集中させる時期。つまり設備機器がフル稼動するシーズンだ。高圧受電における最大需要電力(デマンド値)やピークカット、ガスの最低使用制限などの制約のなかで、工夫を凝らし、チーム内の協力体制をより強くしながら迎えた。「実際にどれくらいの容量が必要なのか、この時期で把握できます。どのプラントも稼動1年目はあらゆる課題が噴出する時期。この1年間は緊急時にも対応できるように、常に体調を整えていました」。
そして2年目。あらゆる出来事にも対応できるように対処法が確立され始めた。少しずつ松田たちの努力が実を結ぼうとしていた。

最も課題が多く噴出する稼動1年目を乗り切り、安定稼働が続くいま、
省エネルギーに向けた改善提案なども積極的に行っている

稼動3年目。課題の解決だけではなく、担ったミッションの実現への取り組みも進んでいった。「2年目の安定稼働が実現されるようになると、設備機器の運転データも集まり、省エネ提案のベースになる基本が整いつつありました。3年目は熱源を最適に選定する制御を行うことで可能となるエネルギー消費の改善提案も行うことができました」。
ところで、松田はこのプロジェクトに参加したときから、あることを始めていた。それはこのプロジェクトで起きたことや考えたこと、課題や成果をこまかく書き留めることだ。文章や図表などA4サイズのノートに細かく書き込まれたそれは、まさに松田の汗と熱意だった。そしてこのノート作成は各プロジェクトに関わった先輩技術者たちも行なっていたことだった。ノートに綴られた内容は現場に基づいた「生きたマニュアル」となって、後輩に受け継がれている。

松田が経験した第2プラント運用に関するすべてが詰まっている、手書きの「技術提案ノート」。この内容がマニュアル確立の基礎となる

「予想外の出来事や課題を経験できたことが、このプロジェクトに参加することで得た財産です。オーナー様からいただく目標は難題も少なくありませんが、私自身の力だけではなく、設備管理室の仲間の存在は大きかったですね。判断に迷ったときはベテランの先輩技術者にも聞くこともあり、そんなとき的確に応えてくれたことがプレッシャーに打ち勝つことにつながった。いま大阪ステーションシティへの安定供給と省エネに貢献できたことで、大きなやりがいと達成感を感じています」と振り返る。松田はいまも第2プラントの責任者として陣頭指揮を執っている。

行き詰ったときにアドバイスをもらい、情報を共有し、安定稼働に向けて前進していった仲間。互いにとって大切な存在だ

松田たちが取り組んだ第2プラントは2013年に
第52回空気調和・衛生工学会賞『技術賞』を受賞。
(受賞者は大阪エネルギーサービス、西日本旅客鉄道株式会社、大阪ターミナルビル株式会社 ほか)
国内の地域冷暖房プラントの中でトップレベルのシステムCOPを達成した。

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